分子栄養 婦人科

日本ではメチル葉酸(活性化型)のサプリは作れない?!

妊娠を考える、もしくは妊娠中(特に初期)の女性にとって葉酸は

サプリメントでの摂取が推奨されている栄養素ですが、

調べてみたところモノグルタミン酸型葉酸・ポリグルタミン酸型葉酸などと分かりにくい分類がされていたので

ここで整理し、日本国内で作られる葉酸サプリの懸念点をまとめます。

「葉酸」には種類があることを知ってください。

日本ではひと口に「葉酸」とまとめられてしまうことが多いのですが、

葉酸には種類があります。

その種類を表すのには英語表記が分かりやすい。

①folic acid

②folinic acid(フォリン酸と呼ばれる)

③5MTHF(メチル葉酸や活性化型と呼ばれる)

日本の葉酸サプリメントの販売広告では食品中に含まれる葉酸(dietary folate)をポリグルタミン酸型と呼び,

時に天然葉酸とも呼ぶようです。

要は普段われわれが食事から摂取している葉酸ですよ。

わざわざややこしい呼び方する意味がちょっと分かりませんが。

そしてモノグルタミン酸型(正式にはプテロイルモノグルタミン酸型)葉酸は

上記で挙げた英語表記で行くと①folic acidで人工的に合成された葉酸です。

モノグルタミン酸型葉酸>>ポリグルタミン酸型葉酸???

「人工的に合成された」と聞くと、食品に含まれるポリグルタミン酸型葉酸のがいいのでは?と

感じる方は多そうですが、

食品に含まれるポリグルタミン酸型葉酸は体内で分解されてモノグルタミン酸型葉酸になり、

その生態利用率は

ポリグルタミン酸型(天然)葉酸はモノグルタミン酸型(人工)葉酸の半分程度しかない

ために妊娠初期や妊娠を予定する、葉酸需要が高い女性にとってはモノグルタミン酸型が有用でしょ?

というのがどうやらサプリメント会社のうたい文句。

ほや
個人的には食事からとる葉酸を
サプリメントの葉酸との生体利用率のみで比較することは
ナンセンスだと思いますが…
もちろん日ごろの食事に葉酸が多く含まれる食品

(レバー、ブロッコリー、ほうれん草、海苔やワカメなどなど)

を組み入れることは大前提ですよ。

胃腸ちゃん

日本製のサプリメントに添加されるのはfolic acid(人工型葉酸)タイプ

ここまで妊活・妊娠初期での葉酸が必要と言われるのには理由があって、

葉酸の不足で胎児の神経管閉鎖障害のリスクが有意に上昇するから。

(「葉酸、妊娠」で日本語論文検索するとほとんどが神経管閉鎖障害に関するもの)

厚生労働省が葉酸の摂取を促しているのはこのリスクを回避させるためであり、

通常の食事以外(要するにサプリメント等)から400mcg/日 摂取が推奨されています。

それで妊娠前・妊娠初期にモノグルタミン酸型葉酸(=folic acid)をということになっているのですが、

日本では食品やサプリメントに添加が認められている唯一の葉酸がfolic acidのみであることが問題。

葉酸の代謝経路が複雑である理由

以前に少しこちらの記事でも触れていますが、

葉酸が体内で代謝される経路は簡潔ではないです。

葉酸サプリの使い分けをiHerbランキングとともに見ていこう

続きを見る

それには理由がありまして、

folic acid が活性したfolinic acid(フォリン酸)はDNA合成・細胞分裂に関わるので、

そこに作用する栄養素が容易に吸収され体内で過剰となれば問題が生ずるだろうことは

直感的に納得できると思います。

葉酸を過剰に摂取した場合

厚生労働省が『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』で葉酸塩について海外の情報をまとめていますが

・ビタミンB12欠乏をマスクする可能性(ビタミンB12欠乏症の関連には貧血や認知症)

・前がん病変の進行が加速

・サプリメントで1000mcg/日以上を妊娠前後の期間に摂取していた場合、その母親の産児は、

400~999mcg/日を摂取していた母親の産児と比較して4~5歳児における認知発達に関する複数のテストで得点が低かった

という研究もあるので数値の参考になるかと思います。

いずれにしても、特に妊娠に関わる時期の栄養充実は多面的なバランス感覚が重要ですね。

folic acidの何が問題なのか?

folic acidは体内でfolinic acid(フォリン酸)さらに5MTHF(メチル葉酸)と活性されていくのですが、

この活性が人によっては苦手な場合があるというのが分かってきています。

それはMTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)という葉酸を活性化させる酵素の働きが弱い場合

遺伝によって決まるものです。

MTHFR遺伝子のC677Tという部分にCC、CT、TTという多型が存在し

CC型に比べてCT型は約35%の酵素活性低下、

CC型に比べてTT型は約70%の酵素活性低下がある。

MarniHiraoka,"Status of vitamins B2,B6, B12 and folate and methylenetetrahydrofalate reductase (MTHFR )polymorphisms",Vitamins(Japan ),87 (8),425−429(2013)

【遺伝子多型とは】
遺伝子の表現型に致命的な影響を与えない範囲の
遺伝子の個体差のこと。
一般的に人口の1%以上の頻度で存在するものを指す。

TT型は日本人では15%程度、TT型とCT型を合わせると約半数とも言われるので、

「葉酸(folic acid)の代謝が苦手」に当てはまる可能性のある人は結構多いと思われます。

MTHFR遺伝子多型の影響

MTHFR遺伝子多型は血中ホモシステイン濃度にも顕著な影響があり

血中ホモシステイン濃度の上昇

・心筋梗塞

・脳梗塞

・動脈硬化症

・血栓塞栓性疾患 など

の危険因子であるとも。

また自閉症との関連も指摘されつつあります。

ホモシステイン代謝とビタミンB

続きを見る

葉酸の代謝についての遺伝子検査

これから妊娠を予定している方やいつ妊娠してもおかしくない状況の女性であれば、

葉酸は充実させておきたい栄養素の上位のはずです。

その時に自分の遺伝子型を知っておくのは悪くないと思います。

ざっと何個か見た感じ5000円前後で自宅でできるのでお手軽かと。

 

 

調べていて闇が深いと思ったのが、

どこの会社とは言いませんが、

葉酸遺伝子検査の販売ページに“日本国内産”の葉酸サプリが付随して販売されていて

「闇が深い…」と思ってしまいました(^^;)

賢明な皆さまは遺伝子検査でTT型やCT型であった場合は

iHerb等の海外から取り寄せでメチル葉酸(5MTHF)を購入してくださいね。

Jarrow Formulas, メチル葉酸、400mcg、ベジカプセル60粒

iHerbでも「葉酸」で検索するとfolic acidとfolinic acid、そして5MTHFは混在していますので注意して購入してくださいませ。

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