必須アミノ酸でもないグルタミンが
なぜそんなに重要なのか?
体内でグルタミンの需要が亢進しているかどうか?
これがポイントです。
先に「まとめ」読みたい人はコチラ。
腸管粘膜とグルタミン
グルタミンは筋肉、血しょう中に1番多いアミノ酸で
骨格筋から全身へ供給されています。
グルタミンの持つ機能・役割には
- ターンオーバーのはやい免疫細胞・小腸粘膜細胞のエネルギー源である
- 組織間の窒素輸送
- 酸ー延期平衡の調整
- 糖新生
- 核酸やグルタチオンの前駆体
といったところがあります。
入院、麻酔、手術、回復の一連に免疫機能を増強する目的でグルタミンを補充すると
感染性合併症の発症率は減少し、
在院期間が短縮されることも研究が進んでいるそう。
腸管の防御機能が破綻した場合
一般の他の細胞ではブドウ糖がエネルギー源となりますが、
腸管の粘膜細胞の主要エネルギーはグルタミンです。
肝硬変のラットに対して行った実験で
経静脈から栄養をいれた場合(いわゆる点滴)と、経腸で栄養を入れた場合とで
腸粘膜の細胞数や肝臓に入る血管中の毒素を測定したところ
経腸で栄養を入れた場合の方が腸粘膜細胞数やタンパク質の含有量が高く、
エンドトキシン値(毒素)は低かったという結果。
肝硬変ラットに70%肝切除を施行し、術直後より経腸栄養と経静脈栄養の2群に分けて栄養管理を行い、術後24時間の空腸粘膜細胞数や門脈血中エンドトキシン値を測定した。
投与するformulaはまったく同じ組成のものとした。肝切除後経腸栄養にて管理した群の空腸粘膜細胞数や蛋白含有量は、経静脈栄養群に比して明らかに高値で、門脈血中エンドトキシン値は逆に低値を示した。
また、空腸粘膜細胞数や蛋白含有量と門脈血中エンドトキシン値との間には有意の負の相関が認められた。
すなわち、侵襲時におけるbacterial tranlocation発生を抑制するためには、腸管粘膜細胞の傷害をできる限り阻止することが大切で、そのためには経腸栄養の併用や、腸管粘膜細胞の主要エネルギー基質であるグルタミンの投与が有用と考えられる。
東口高志,"Nutritional support in 21st century-Efficacy of the addministration of glutamine and zinc in the NST operarion",静脈経腸栄養 Vol.20 No.4,2005
引用中にある「bacterial translocation」は
と定義されているのでリーキーガット(LGS)と読み替えても差し支えないかと。
腸管の防御機能が破綻している場合、グルタミンが有用です。
bacterial translocationが起こるのはどんな時?
①出血性ショックならびそれに伴う腸管の血行障害
②長期絶食に伴う栄養障害
③外傷や熱傷などの生体に対する直接的なストレス
④肝切除や胃全摘などの外科手術
⑤腸閉塞などの消化肝閉塞
⑥急性膵炎
⑦肝硬変や閉塞性黄疸などの高度の肝機能障害
⑧潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患
⑨病原菌による粘膜上皮の傷害
⑩長期間の完全静脈栄養など強制栄養管理
⑪ザイモザンや抗生剤乱用などの直接的あるいは間接的な薬剤作用
⑫放射線照射
等だそう。
運動後や血糖値にもグルタミン?
また運動後にグルタミンを摂取することで免疫抑制を軽減したり、グリコーゲンの回復を促進するとも。
順天堂大学の面白い実験がありまして
スタートから24時間後のフィニッシュまでに走った距離を競う
選手は食事・休憩をとってもよいが、フィニッシュまで走り続ける競技
なんて地獄みたいな競技なんだ(笑)
順天堂大学が熱心に研究している
小麦グルテン加水分解物(以後WGH)という、
グルタミンを含有するタンパクを摂取した場合と、そうでなかった場合の
血しょうグルタミン濃度によるパフォーマンスの違いを実験した結果が
【プラセボ群(WGH摂取なし)】→血しょうグルタミン濃度は経時的に減少。また15時間目までに8名中6名がリタイヤするか連続1時間以上の休憩を取った。
【WGH摂取群】→血しょうグルタミン濃度は運動前のレベルを維持。また8名中7名が休まずに走り続けていた。
この通り。さらに注目すべきは
レース中には差し引き6,746kcalが消費されるが、このとき低血糖とともにブレーキが生じたとの報告がある。
~(中略)~
24時間走の結果はWGH摂取により血しょうグルタミン濃度を維持することで血糖値の低下を防ぎ持続走行を可能にしたことを示しているのかもしれない。
これ、わたしの体感とも一致していまして。
低血糖来そうだな~と感じた時にグルタミン飲んでおくと落ち着くんです。
(重度の低血糖ではおそらく効果なし)
「ある種の条件下では必須となるアミノ酸」
グルタミンは体内に最も豊富に存在するアミノ酸なので
臨床シーンでの注目度は低かったようなのですが、
1980年代以降からその研究が進んでおりconditionally essential amino acid
訳すると「ある種の条件下では必須となるアミノ酸」と呼ばれるようになっているそう。
良いですね~
もともと体内に存在している栄養素にも関わらず、重要度が低いと後回しにされていた成分が
栄養療法という側面から切り出したときに
こうして再度注目される。
だいぶマニアックと言われるかもしれませんが、これが分子栄養学・栄養療法の醍醐味であるとも思います。
まとめ
先で挙げたように一般的には外傷や感染、手術などの外科的ストレスで
生体のグルタミン需要は増加すると考えられる。
ただ、手術や外傷を受けたわけではなくても、
小腸でのグルタミン需要が亢進し(増えすぎ)ている状態がIBSやSIBOでも起こっていると仮定すれば、
それを満たすほどの生合成は行われず結果的に不足の状態となる。
その場合グルタミンを経口から摂取することは
お腹の不調に対して自分でできる栄養の第一選択肢と言えそうですね。
MRM, L-Glutamine 1000、2.2 lbs (1000 g)
それにしてもグルタミンパウダーの売り切れ状況、継続してひどいですね~(;^ω^)